ここがヘンだよ尾頭さん

シン・ゴジラの突っ込みどころに突っ込んだり突っ込まなかったりするブログ

《ツッコミ》矢口プランは間違いまくっている件

 矢口プランはゴジラの活動を停止させる作戦の肝であり、巨災対の活動の大半を占める重大なプランであります。

 しかしながら、このプランは間違えだらけの、実に杜撰なプランであると言わざるを得ません。

 第1回の今回は、その問題点について記していきます。

 

プランの立案過程

 矢口プランは劇中、次の(1)~(7)の順に検討・提案されていきました。

(1)ゴジラが海に帰った理由は冷却不足

(2)冷却は背鰭などで行われるが補助的なものであり、血液循環により冷却している

(3)ならば血液を凝固させればどうだろう?

(4)(3)の結果、冷却が不十分となりエネルギー発生源(以下、原子器官)を停止させざるを得ない

(5)停止にあたり原子器官を急速に冷却する必要がある

(6)ゴジラ死ぬ、もしくは活動を停止すると思われる

(7)だから血液凝固剤の経口投与が有効!

 

 その結果、ヤシオリ作戦においてゴジラの凍結(文字通りの意味で)に成功したのですが……それではそれぞれの過程をみてみましょう。

 

学者なのに冷却システムを理解していない?

(1)はゴジラの行動から内容を仮定しているだけなので、特に問題となる部分はありません。

(2)と(3)、この部分の問題は、劇中では学者が「鰭での冷却を補助」と言い切っていますが、鰭は補助ではなく冷却システムとして相当に重要な部分であるという点。原子器官の熱を血液で運んでいるという仮定はよいと思いますが、その運んだ熱を鰭又は表皮からの放熱なしでは原子器官を冷却できません。ここでの言葉については結果に影響を与えないわけですが、学者が発する言葉としては疑問が残ります。本来ならば「鰭などから放熱しているが、冷却液として機能している血液の循環を妨げたい」と言うべきかと思われます。

 

そもそも、死ぬよね?

(4)、血液が凝固すれば原子器官の冷却が不十分となり、原子器官をストールさせる必要があるはずということなのですが……いや、普通、血液が凝固すれば死にますよね? どうして生きている前提なんですか?

 この問題を出すとファンの方は「あんなもんじゃ死なない」と言ってくるのですが、それはゴジラがどういうものかを知っている方の考えです。この時点では巨災対のメンバーはそれを知らないはずですし、そもそもなんで誰もそこに突っ込まないのか疑問です。「サンプル解析結果から、巨大不明生物の細胞は血液循環がなくても死滅しないと予想される」というような内容を一言でいいからこのシーン以前に盛り込んでおくべきではないでしょうか?

 

冷やした熱はどこに行く?

(5)、確かに冷却しなくちゃいけませんよね。はい次。

(6)、これも結果はいいんです。ただ、ゴジラが原子器官を冷却する術を持っている前提で話が進んでいます。「冷却の過程で死ぬか活動を停止する」と尾頭さんが言っていますが、なんで生物が自らの体を冷却する器官を持っていると知っているんでしょうか。正しくは「ゴジラが冷却不足により死に至るか、もしくは活動の大部分を停止して冬眠のような状態に至ると考えられる」と言えばよいのではないでしょうか。

それとこの部分、実行段階においては本当にゴジラが凍結する(しかもマイナス196度まで胸部の中心温度が低下する)わけですが、その冷やした熱はどこに行くんでしょうか。本来なら最後っ屁とばかりに熱線を吐きまくって、そのエネルギーの放出をもって凍結、とすべきではないでしょうか。

※そもそも凍るところまで体温下げる必要があるかという部分に関しては、ゴジラの新元素の核分裂を抑制し、原子器官を停止しておくためにはその温度が必要と解釈しています。

 

薬は飲むより注射に限るぜ!尾頭さん!

(7)、経口投与より注射のほうが絶対効きますよね。なんで経口投与なんですか? 過去作へのオマージュであったとしても、そんなこと巨災対のメンバーは知りませんし、経口投与のほうが注射より有利な理由が何も説明されていません。

 そもそも、放射性物質を餌にする生物の消化器官がどうなっているのか不明ですし、しかも終盤には「ゴジラは水と空気さえあれば生きていける」と判明しました。また、「この歯じゃ核物質も捕食できませんよ」ですし、レーザー撃ったりするぐらいですから、何故他の生物と同様に経口投与が効くと考えられるんでしょうか?

 血液に直接作用させるのであれば注射のほうが考慮されるはずです。消化器系のサンプルを回収した描写はないですし、効果のテストも肉片を用いて行っているはずですので。

これを否定する台詞や状況(注入に時間がかかりすぎる、表皮が硬すぎて対応できる注射針を開発する期間が足りないetc……)及び経口投与が有効な所見(口の中に装甲が薄い部分が確認できる、分析の結果消化器官の構造が判明したetc……)があるシーンがあるべきでしょう。そして経口投与というよりは、口の中の皮が薄い部分に注射するという段取りで実施すべきと考えます。

 

思ったより長くなってしまいました。次回はゴジラの登場シーンについての考察です。その前にもう一度鑑賞してきます。